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先人たちが目指した日本の姿。それは私達の国が常に「よろこびあふれる楽しい国(=豈国)」であり続けることです。


漢字の筆順と日本人の文化性

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またまたテレビで「漢字の書き順が昔と今と違っている」という特集が組まれるのだそうです。
なるほど学校教育の現場での、筆順は、昔と今とでは違っています。
だから「このように変わりましたよ」ということをいいたい番組のようなのですが、問題はむしろ、
「どうしてそのように変わったのか」
にあるのではないでしょうか。


山本五十六の手紙
実に見事な書で書かれています。
20180326 山本五十六の手紙
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


【お知らせ】
3月24日(土)13:30 第49回 倭塾公開講座
4月1日(日)13:30 第三回名古屋倭塾公開講座
4月7日(土)18:30 第25回 百人一首塾
4月15日(日)13:30 チャンネルAJER「古事記に学ぶ日本型経営学」
4月22日(日)13:30 第50回記念 倭塾公開講座
5月5日(土)18:30〜 第26回百人一首塾(公開講座)
5月19日(土)18:30 第51回倭塾(公開講座)
6月9日(土)18:30〜 第27回 百人一首塾 公開講座
6月30日(土)13:30〜 第52回 倭塾 公開講座


以前にも書きましたが、漢字の旧字が、今使われている新字に改められたのは、日本が占領下におかれていた昭和21年11月16日のことです。
このときに、GHQの指導によって、当用漢字が定められました。

公文書や出版物などは、その漢字のみを用いるようにとされ、これに呼応して学校教育の現場でも、新字のみが教えられるようになり、さらにこれに追い打ちをかけるように、漢字の筆順までが変えられるという状況となったのです。

これによって、たとえば礼儀作法の「礼」ならば、もともとは「禮」と旧字で書かれることで、「相手にはっきりとわかるように豊かに示すことが礼なのだ」と、誰もが漢字を通じて「文化の共有」ができていたものが、まったくできなくなりました。
「礼」という新字を見て、これで漢字の意味をとれる人など、およそ皆無だと思います。

ですから昔の教育現場では、系統学習と言って、まず「示偏(しめすへん)」は、示(しめ)すことだと教え、「豊」という漢字は「ゆたか」であることが教えられます。
その上で、「禮」という字を先生が黒板に書いて、
「この字が意味するものは何か、みんなわかるかな?」
と生徒たちに質問したわけです。
そして、
「そう。相手にわかるように
 豊かにしっかりと示すのが禮なんだ。
 だから君たち、
 ちゃんと相手にわかるように
 相手の目を見て、
 深々とお辞儀をして、
 おはようございますとか、
 こんにちはとか、
 言うんだよ。
 それが禮なんだ」
と、教えたわけです。


20180326 イシキカイカク大学



つまり生徒たちは、漢字と読みをただ丸暗記するのではなくて、その意味を推理し理解し、それだけでなく漢字を通じて文化を共有して行ったわけです。

だから学校がおもしろい。
授業が楽しい。
小学生の子供達が、片道6キロも7キロもある道のりを、雨の日も雪の日も歩いて毎日学校へ通い、田植えがあるから学校を休めと親に言われると、泣いて悔しがったというのも、うなづけます。
おそらくいまの日本の学校では、考えられないことであろうと思います。

それもそのはずです。
いまの教育ならば、先生が黒板に「礼」と書いて、「この字は<れい>と読みます」とだけ教えます。
そして「テストに出るよ」と言うから、生徒たちは、「礼=れい」だと、ただ丸暗記するだけです。
そこには推理も理解も、文化の共有もありません。
ただテストに出るからと、丸暗記があるだけです。
これでおもしろいと感じる生徒がいるなら、むしろ神経を疑う。

徳という漢字を見せられて、
「徳とはどのような意味ですか?」
と質問されたとき、ちゃんと即答できる人は、おそらくあまりいないと思います。

けれど徳という字は、もともとの古字は「彳悳」で「彳+直+心」でした。
彳(ぎょうにんべん)は、進むという意味がありますが、要するに真っ直ぐな心で進む(生きる)ことが、徳の意味だとわかるわけです。
ところがこの字は、直の目の部分が横倒しにされてさらに直の「L」の部分が簡略化されて「一」になり、「德」と書くようになりました。

日本は四季のある国で、春夏秋冬、それぞれに美しさを持つ国であるとは、よくいわれることです。
けれど、現代日本人にとっては、四季折々の風情を楽しむという感覚はあまりなくなっているといわれています。
それもそのはずです。
漢字の意味がわからない。

春という字は、上の部分が生という字にも少しだけ似ていますが、土に咲いた草花を意味します。「八」の部分は「束ねる」ことの象形です。
つまり、暖かな太陽のもとで、野の花を少女が束ねる、そんな季節を意味する象形文字です。

夏は、横棒の下に目がありますが、これは冠を付けた人の顔です。
その下に「夂(ち)」がありますが、これは人の足が遅れる、つまり後から行くという意味があります。
猛暑の日、頭に冠を装着しているような人は、暑くて、大汗をかいて、思わず足並みが遅くなる。
そんな季節が夏という漢字です。

秋は、広々とした田んぼいちめんに、まるで火がついたかのように稲穂が稔ります。
「禾(のぎへん)」は稲穂の稔り、そして火の組み合わせが、秋です。

冬は、「夂(ち)」の下に点々があります。
一年の最後に、遅れてやってくる寒い季節が冬です。

人は言葉によって文化を共有しているのであって、日本語なら、日本語の響きと文字によって日本人としての文化を共有しているわけです。
つまり漢字を學ぶことは、そのまま同時に日本の文化を學ぶことでもあるのです。

もっとも、China漢字そのものは、あまり良い意味を持たないものが多いものです。
たとえば教育という漢字は、教が子供をムチで叩く象形ですし、育は、生まれたての嬰児を食べることを意味する字とされています。

しかしそうしたChina漢字の持つ嫌味を、私たちの祖先は、やわらかな響きを持つ大和言葉で訓読みを与えることで中和し、やさしい意味に変えています。
すると教育は、「をしへ、はぐくむ」となります。
「をしへ」は、そのまま「押し絵」と同じ音で、相手にきちんと刻印していくこと、
「はぐくむ」は、そだてることです。
つまり「をしへ、はぐくむ」とは、相手にしっかりと刻印することで人を育てることを意味します。

すると、たとえば子供達への敎育ならば、何のために「をしへ・はぐくむ」のかが大事となります。
それは一人前の大人にするためです。
そのために大人たちが、子に知恵や知識を授けて刻印し、子供達をはぐくみ育てるのです。

このことを「學(まなぶ)」といいます。
學という漢字は、複数の大人たちが、ひとりの子をみんなで引き上げていることの象形です。
したがって「學ぶ」は、大人たちが主体となって、子を引き上げることを意味します。

この場合、子供の側にやる気のあるなしは、関係ありません。
どんな子であっても、一人前の大人として、将来、社会に出るわけです。
そのときに、周囲に迷惑をかけず、しっかりと働いていくことができるように、しっかりとしつけるのが教育であり、學ぶこととされてきたのが日本の教育であったわけです。

ところが戦後の当用漢字は「学」であって、これでは何の意味かわかりません。
それどころか、むしろ子供達が敎育の主役であるかのような錯覚さえも招きます。
子供達が学ぶ場所が教育の場だというわけです。
では、やる気のない子どもはどうするのでしょうか。ほっておくのでしょうか。
それは大人たちの責任放棄なのではないでしょうか。

冒頭に掲げた筆順に至っては、もはや最悪といって良い状況です。
わかりやすい例が、「必」です。
もともとこの字は、「心」と書いてから、「ノ」を最後に入れました。
つまり、心にしっかりと刻むから「必」なのであって、筆順もそのとおりになっていたのです。

ところがいまでは、カタカナの「ソ」を書いてから、「し」と書いて、点を両側に二つ打ちます。
その書き順で、必という漢字の意味を受け取れる人など、果たしているでしょうか。

筆順が変わった漢字として、よく持ち出されるのが「上」です。
昔は、上にある小さな横棒を書いてから、縦線、下の横線と書きました。
いまは、縦線を書いてから、上の横線、下の横線と書きます。

もともとこの字は「指事文字」といって、甲骨文字では、基準線の上に短い横線を引いた「二」の形だった文字です。
二をつなげて書いたら「乙」のような形になりますが、実際、上は草書体では「乙」のような形に書かれます。
つまり字義としては
「短い横線が、長い基準線の上にあるから、上を意味する」
のであって、上から下に行った筆先が、また上に登って行って横線を書いて、それから基準線を引くというような、ややこしい文字ではないのです。
ですから昔の筆順は、横縦横であったのですが、いまではなぜか縦横横です。
なにがなんだか意味がわからない。

要するに、日本語の漢字から、できる限り意味がわからないようにされたのが、当用漢字のそもそものはじまりであり、これに呼応して筆順まで変えて、より一層、漢字の意味がわからないようにした、というのが、戦後の国語教育であり、漢字の用い方であったわけです。

くりかえにしなりますが、文字は文化です。
文字によって、人はその意思を書き留め、人に伝えることができます。
文字を単に音符として用いる欧米文化とは、異なる文化性が、そこにあるのです。

そうしたことをちゃんと自覚していく。
それは日本人が日本人であることへの自覚に通じることなのではないかと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

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コメント
No title
ねずさん 今日はwぶっちゃけ漢字にも変遷の歴史あり。
古代漢字研究家の白川静氏の御本をすこし齧って知った事です。
甲骨文字、金文などもそうですが、文字は人々の社会の維持の為に考
え出されて生まれ、社会の変遷により変化した。人々が覚えにくけれ
ば、覚えやすい形に変わった。文字の保存ではなく人々の暮らしの為
に。現代人は自分で書かなくてもスマホでパソコンで変換してくれる
ので、書けなくても読める字体が増えたのだそうですwコミュニケー
ションに役立つ事が文字の大事な役割ですからいい事だと思いますw
海外に受けている絵文字も考案されましたし・・時代は動いています
よ。漢字の形そのものが社会の変遷を表しているのです。文字に興味
の無い子供達はあまり反応しません。まず読む音に反応したりします。
ですが個々人の脳はそれぞれ発達の仕方が違うので、時期が来たら反
応したりw同じ文字を見て真似て書いても左右反転する脳機能の子も
稀にいたり・・。
学習には、見て覚える、聞いて覚える、音読して覚える、書いて覚え
る、実践・実験して覚えるある等々・・この中で個々人の得意な学習
法があるわけです。読んで覚える場合も、丸っこい文字だと覚えると
か・・・美・文字ですと頭に入りにくかったりとか・・ややこしいw
戦後、文字を微妙に変えた事は、はっきりとは言わないが、戦後体制
への移行宣言であり、それに心せよという事だったのでは?文字は読
みやすく覚えやすく、国民全体のボトムアップで、どんな社会体制を
強いられようとも、男女問わず国民の一人一人が無教養のまま引きず
られる事のないようにと。多数の文字を検討した人達がいたはずです。
表面で何を言おうと、沈黙の中に・・あるいは無意識の中に目指した
ものがあるはず・・そういうのを考察するのもいい・・かなw

2018/03/29(木) 21:31 | URL | くすのきのこ #-[ 編集]
訓読み!
お疲れ様です。
漢字のお話、いつも大変興味深く読ませていただいております。
日本の漢字はやはり訓読みですよね。
漢字にも我々のナショナリズムの源が息づいていますね。
2018/03/28(水) 22:54 | URL | KK #kpjYxc8I[ 編集]
そういえばもう一つの漢字であるChina共産党の漢字も日本の新字とどっこいどっこいかそれ以上に意味のわからない文字ですね。
正直台湾や香港がうらやましいのが文字の環境です。
以前、戦前に発行された文庫本で「阿Q正伝」を読んだことがあります。最初は旧漢字に四苦八苦しましたが、だんだんわかってきて楽しい読書になりました。
2018/03/28(水) 18:57 | URL | Sat #JalddpaA[ 編集]
できることなら(笑)
できることなら、旧字体に戻って、漢字を最初から教わりたいものです。
書き順もしかり。
2018/03/28(水) 15:04 | URL | Kaminari #-[ 編集]
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ねずさんのプロフィール

小名木善行(おなぎぜんこう) HN:ねず

Author:小名木善行(おなぎぜんこう) HN:ねず
連絡先: nezu3344@gmail.com
執筆活動を中心に、私塾である「倭塾」、「百人一首塾」を運営。
またインターネット上でブログ「ねずさんのひとりごと」を毎日配信。他に「ねずさんのメールマガジン」を発行している。
動画では、CGSで「ねずさんのふたりごと」や「Hirameki.TV」に出演して「奇跡の将軍樋口季一郎」、「古事記から読み解く経営の真髄」などを発表し、またDVDでは「ねずさんの目からウロコの日本の歴史」、「正しい歴史に学ぶすばらしい国日本」などが発売配布されている。
小名木善行事務所 所長
倭塾 塾長。

日本の心を伝える会代表
日本史検定講座講師&教務。
(著書)

『ねずさんの昔も今もすごいぞ日本人』

『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!和と結いの心と対等意識』

『ねずさんの 昔も今もすごいぞ日本人!日本はなぜ戦ったのか』

『ねずさんの日本の心で読み解く百人一首』日本図書館協会推薦

『ねずさんと語る古事記 壱〜序文、創生の神々、伊耶那岐と伊耶那美』
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