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先人たちが目指した日本の姿。それは私達の国が常に「よろこびあふれる楽しい国(=豈国)」であり続けることです。


景行天皇と鯉の餌付け

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日本では、イザナキ、イザナミの時代から、男女は対等です。
たとえどのような権力者であったとしても、女性の同意を得ずに性交に及ぶことは禁忌とされてきたし、女性はたいせつな国の宝とされてきたのです。


20190308 恋は鯉
(画像はクリックすると、お借りした当該画像の元ページに飛ぶようにしています。
画像は単なるイメージで本編とは関係のないものです。)


「鯉(こい)」といえば錦鯉(にしきごい)ばかりに注目が集まります。
錦鯉は改良種で、その元になった淡水魚が野鯉(のこい)で、野鯉は世界中の河川や湖に分布しています。
明治以降の一時期、日本の鯉は、Chinaから輸入されたといわれていた時期があったのですが、日本の6430万年前から260万年前の地層である「第三紀地層」から鯉の化石が発見されたことから、輸入された魚ではなく日本の古性種であることが明確になりました。

その野鯉から、あの美しい錦鯉がつくられたのですが、実はこれには上杉鷹山(うえすぎようざん)が関係しています。
上杉家は、もともと新潟の上杉謙信を祖としますが、江戸時代に山形県の米沢に改易されました。
藩の収入が激減したのに、藩士の数は減りません。
このため上杉藩は財政が苦しくなってしまうのですが、このときに藩主の上杉鷹山が奨励したのが「鯉の養殖」でした。

上杉鷹山は、福島県の相馬藩から鯉の稚魚を取り寄せ、各家庭で鯉を飼うことを奨励したのです。
鯉は淡水魚ですから、台所脇の小さな溜めで育てることができます。
そこで、ほっておいても食事のあとの残飯を食べて育ってくれます。
そして雪に閉ざされた長い冬には、人々にとっての貴重なタンパク源となり、また凶作や災害時の非常食にもなってくれるわけです。
つまり、一石が二鳥にも三鳥にもなるわけで、おかげで上杉藩では、まさに藩をあげて鯉が養殖されるようになりました。

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ところがここで面白いことが起こります。
以前にもご説明したことがあるのですが、ここで法則が働くのです。
それが、
「全体のレベルが上がると突出したものが現れる」
という法則です。

このことは、偏差値45の高校が偏差値55に向上すると、75以上の偏差値を持つ秀才が幾人も現れるといったことや、政治が真に国民の利益になるような政治になろうとするとき、有権者の民度が上がれば、必然的に政治が戦略化し、国の内外に向けた政治レベルが向上し、さらには傑出した政治家が現れる、といったことにもつながります。
ついでに申し上げますと、政治家を選ぶ有権者が、猫も杓子も20歳以上なら、という制度は、実は政治のレベルを著しく下げることになり、逆に政治に責任を持つ人達に制限された選挙制度のもとでは、国益を重視した政治が行われ、さらには傑出した政治家が現れるというのが、実は世の常です。

かつての米沢藩がまさにそれで、米沢の場合は、藩の全戸が鯉の養殖を始めたことで、その中から、鯉を改良して錦鯉にするという傑物が現れたのです。
もともと上杉家のあった越後では、長岡を中心に鯉の養殖が盛んで、改良されて様々な色合いを持つ鯉が生まれていました。
この鯉を、さらに米沢で改良を施して、いまのような錦鯉が誕生したのです。
近年、テレビなどで「錦鯉はChina生まれ」などと、誤った宣伝がなされているそうですが、とんでもない誤りなのです。

さてこの鯉について、日本書紀の景行天皇紀に、短い挿話があります。
非常に象徴的な記述になっていますので、少しだけご紹介します。

 ****
『日本書紀』景行天皇

よとせのはるの きらさぎの 
四年春二月
きのえのとらの ついたちの きのえねのひに
甲寅朔甲子
すめらのみこと みのにいでまし
天皇幸美濃
さうをまをして まをさくに
左右奏言之
このくにに おとひめといふ
「茲國有佳人曰弟媛
 みめうるはしき よきをみなあり
 容姿端正
やのさかの いりひこみこの むすめなり
 八坂入彦皇子之女也。」
すめらのみこと きさきにえむと おもほして  
天皇欲得為妃
おとひめの いえにいでます。
幸弟媛之家。
おとひめこしの みゆきとききて
弟媛、聞乘輿車駕
すなはちたけの はやしにかくる
則隠竹林。


景行天皇御即位4年というのは、具体的な年代は不明です。
その年に景行天皇が美濃(岐阜県)に行幸されて、そこで弟媛(おとひめ)という美女の噂を聞きつけるわけです。
さっそくその弟媛を娶(めと)ろうとして訪問するのだけれど、弟媛は竹林に隠れてしまったわけです。

ここにおひて すめらのみこと
於是天皇
おとひめを はかりしめむと
権令弟媛
くくりのみやに いたれると
至而居于泳宮之(泳宮此云區玖利能彌揶)
いけにこいをば はなちける
鯉魚浮池
あさよひに みそなはしては あそびけると
朝夕臨視而戲遊
おとひめは、こいのあそぶを みむとほっして
時弟媛、欲見其鯉魚遊而
ひそかにいけに まうでける。
密来臨池。
すめらのみこと これをとどめて とをさくに
天皇則留而通之
ここにおとひめ をふとめのみちは
爰弟媛以為夫婦之道
いにしへも いまものりをば かよへける
古今達則也
しかれどもあは もやもやす
然於吾而不便
すなはちは すめらみことに こひてまをさく
則請天皇曰
あはまぐあひの みちねがわぬが
「妾性不欲交接之道
いまのみことの おどにかてずに
 今不勝皇命之威
しばらくは おほとのうちに めされたり 
 暫納帷幕之中
しかるにこころ よろこばず
 然意所不快
またかおも きたなくて
 亦形姿穢陋
ひさしくにはの つかへにたへず。
 久之不堪陪於掖庭
ただわらわには あねがあり
 唯有妾姉
なはやさか いりひめ
 名曰八坂入媛
みめうつくしく こころざし いさぎよし
 容姿麗美、志亦貞潔
よろしくさきの みやにめしいれ たまふべし
 宜納後宮。」
すめらのみこと これをゆるして
天皇聽之
やさかのいりひめ めしてみめとす
仍喚八坂入媛為妃
ななのひこみこ、むつのひめみこ うみませる
生七男六女


要するに景行天皇は、その美しいと評判の弟媛に会いたいと思って美濃国の八坂まで来たけれど、弟媛が恥ずかしがって隠れてしまったので、一計を案じて、朝夕に池に鯉を放して遊んだわけです。
すると、その様子を一目見ようと、弟媛が景行天皇の前に現れる。
そこで「お前を私の妻にしたい」と述べるのだけれど、
弟媛は「自分は性的なことが苦手だし、そういうことなら姉の方が美人なので」と、景行天皇の求めを拒むわけです。
景行天皇は、その拒否を受け入れて、姉の八坂の入媛(いりひめ)を妻にし、七男六女の子をもうけられた、というお話です。

実はここで登場する鯉は、たいへんに象徴的なものとして登場しています。
というのは、鯉は古来、妊婦にとっての重要な栄養源であったわけです。
つまり景行天皇が鯉で遊んだ(鯉を飼った)ということは「妊娠中の妻に十分な栄養をつけますよ」という意思表示になります。
それで弟媛は、「ああ、妊娠中の奥さんがいるんだな」と安心して竹林から出てくる。
ところがいざ景行天皇に会ってみると、「お前を妻に欲しいのだ」というわけです。

ここで弟媛は
「自分は性的なことは好きじゃないし、
 久之不堪陪於掖庭(ひさしくにはの つかへにたへず)」と述べています。
後段のところは
「景行天皇の家の庭のワキで、
 景行天皇に付き従うことに堪(た)えられない」
という意味ですから、要するにひとことでいえば、景行天皇の求愛を、ものの見事にフッたわけです。
ただし「姉は美人だし、心も美しいので、後宮に入れるように話してみられたらいかがですか?」というわけです。

景行天皇は「そういうことなら」と、弟媛をあっさりとあきらめて、姉を求めることにするのですが、その姉にしても、本人が嫌だといえば、それっきりのことであることは、弟媛の場合と同じです。
結局、姉は景行天皇の求愛を受け入れて妻となります。
そして七男六女をもうけたというのですから、どれだけ景行天皇が姉の入媛を生涯愛し続けたかがわかります。

ここでいえることは、我が国では、国家最高の権威である天皇でさえ、相手の女性の気持ちを慮(おもんばか)って、妻を得ていたという事実です。

古代においては、世界中どこでも権力者にとって、女性は所有物です。
言うことを聞かなければ、刀で脅してでも自分のものにする。
それが世界の常識であったともいえます。

けれども日本では、イザナキ、イザナミの時代から、男女は対等です。
たとえどのような権力者であったとしても、女性の同意を得ずに性交に及ぶことは禁忌とされてきたし、女性はたいせつな国の宝とされてきたのです。

短い一節ですが、鯉という妊婦の栄養食という道具立てを利用しながら、男女の対等を見事にあらわした一節だと思います。

ちなみに我が国で、恋のことを「こい」と呼ぶようになったのは、この景行天皇の逸話がもとになっているのだとか。
恋は対等!
あたりまのことですが、とっても素敵なことですね。

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03-05 国生みと神生み
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12 進取の気象
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コメント
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